「覇王別姫」



春季全国詩吟大会 日比谷公会堂

 昨年の春季全国詩吟大会では、「覇王別姫」というテーマで「垓下歌」「題烏江亭」「虞美人草」「返歌」からなる企画構成吟を企画しました・・・

 詩吟神風流の教本の中には素晴らしい漢詩がいくつもありますので、中国の漢詩を日本人に身近なものとして紹介することができれば、詩吟の「国をつなぐ文化」としての存在意義を高められるのではないかという思いで、今回の企画を発案するに至りました。

 中国の歴史物語である「覇王別姫」は、京劇をはじめ映画やドラマ、宝塚歌劇でも題材になり、日本でもよく知られています。日比谷公会堂の大舞台で発表できるので、多くの人に、観て、聴いて、そして少しでも心に残していただけるような舞台作りをしようと考えました。

 特に、虞美人が命を絶ったあとに赤い花を咲かせるという場面について悩みましたが、会員の方が出演者の赤い衣装を何枚も作って下さいました。舞台で着脱が簡単にできるような工夫も加えられている、手作りの衣装は、出演者は勿論、観る人の心にも深く残ったことと思います。

 また、女性の視点で「覇王別姫」をどのように表現したらいいのか考えました。項羽と別れたときの虞美人はまだ十代の少女です。その時の虞美人にとって、項羽はどのような存在に映ったかについては様々な解釈がありますので、それならばその答えを虞美人の「返歌」で直接中国語で朗読したらいいのではないかということになりました。
 
 中国からの留学生との交流も深めていましたので、今回のように、中国語で原文を朗読する機会に恵まれたことを嬉しく思いました。中国では、この項羽と虞美人の話は日本人が考えている以上にとても壮絶でまた絶望的な話だと聞き、それを上手く朗読で表現するためには自分なりの練習と努力が必要でした。詩心を理解し、表現することが如何に大切であるかを改めて感じましたので、今回の企画構成でもそれを大事にしたいと思いました。そのために大きな力になって下さったのは、舞いを合わせて下さった先生方でした。

 尺八伴奏の先生も、詩吟の旋律とは異なる中国風の伴奏を合わせて下さいました。会員の方々が心を一つに練習を重ね、本番まで無事に仕上げることができるのも、詩吟の醍醐味だと感じています。