神風流創始九十周年記念詩吟大会

改修前の日比谷公会堂での大会・・・

平成27年11月2日・3日の2日間、神風流創始九十周年記念大会が開催されました。これまで長年にわたり、毎年春秋と全国詩吟大会の会場としてきましたが、日比谷公会堂が閉鎖されるとのこと。創始九十周年記念大会は、「ふるさと」ともよべる日比谷公会堂で開催したいとの切なる希望のもと今大会が開催される運びとなりました。




第一日目 11月2日(火)
  

第一日目の主な内容
・総元代範による長詩名吟 
「送夏目漱石之伊豫」(正岡子規)
「荒城の月」(本宮三香)

「飲中八仙歌」(杜甫) 
「姫百合之塔」(中村宏)

・免状授与 独吟 合吟 企画構成吟 剣詩舞

・吟詠指導「和歌 箱根路を」(源実朝)

・大合吟「蒙古来」(頼山陽)


 プログラムは、正午定刻、神風流総元代範「四つの会」による「特別企画」から始まりました。この企画は、神風流の「松の会」「梅の会」「竹の会」「花の会」の「四つの会」がそれぞれ神風流の珠玉の吟詠集の中から「長詩」を選び、解説を交えながら吟じるというものです。
 神風流には、「琵琶行」「長恨歌」をはじめ、他流には無い秘曲として、総元代範であれば習得したい数々の長詩があります。
 今大会では、竹の会は『続古今集』より「送夏目漱石之伊豫」(正岡子規作)、花の会は『朗誦』より「荒城の月」(本宮三香作)、松の会は『新編古今名吟集』より「飲中八仙歌」(杜甫作)、梅の会は『百人一詩集』より「姫百合之塔」(中村宏作)を舞台で発表しました。
 漢詩が作られた背景や漢詩の解説に加え、滝廉太郎作曲「荒城の月」、森山良子「さとうきび畑」といった歌唱が入り、素晴らしい歌声は聴く者の心を惹きつけ、会場全体が静まりかえる程でした。さらに、剣舞、寸劇などを交えながらの合吟は、それぞれの会が趣向を凝らした楽しい企画となりました。
 第一日目は、このような企画と総元代範吟詠・合吟、免状授与式が行われました。
 最後は、総元岩淵神風先生による「泊天草洋」(頼山陽作)、それに続く会場全員での「蒙古来」(頼山陽作)でした。



第二日目 11月3日(祝)
 

第二日目の主な内容
・特別企画「長恨歌」(白居易)
・書道吟「祝賀詞」(河野天籟)
・企画構成吟「安政の大獄と桜田門外の変」
・企画構成吟「越後与坂大阪屋と良寛」
・企画構成吟「日蓮聖人」
・企画構成吟「楼上の眺め」
・企画構成吟「長江悠々」
・企画構成吟「維新の立役者西郷」
・会旗入場・記念式典・独吟・合吟・剣詩舞・青少年吟(20才未満)

・合吟コンクール
・大合吟「正気歌」(広瀬武夫)

 昨日の雨空が嘘のように晴れ晴れとした朝、玄関前に並べられた見事な菊花に迎えられ、8時50分の開場でした。後援会から贈られた酒樽、舞台上の菊の花も大会二
日目を盛り上げていました。
 今日の舞台は特別企画「長恨歌」(白居易作)から始まりました。出吟者は130名。最初から最後まで120句を吟じると1時間はかかるので、今回は時間の制約により、最初の50句と最後の10句のみの吟となりました。出吟者は、この舞台に先立ち行われた総元代範研修会では「長恨歌」の全て120句を勉強したので、その成果が発表された場となりました。男女混合の吟詠は、本数が違うので難しいところですが、男性の力強い吟詠と女性の美しい吟詠とを合わせて一つのものを作るということに意義があり、それもまた合吟の魅力の一つだと感じられました。
 少年少女の部では、小学2年生、小学4年生、小学6年生の計5人が吟詠を披露してくれました。若くて瑞々しい声であることはもちろんのこと、力強く凛とした響きは会場を魅了しました。
 会旗入場、記念式典、合吟、独吟、企画構成吟、合吟コンクールと盛り沢山の内容で、終了は午後8時を過ぎました。
 
 記念式典には、野田聖子衆議院議員、平将明衆議院議員、橋本聖子参議院議員よりご祝辞をいただきました。詩吟は、お腹から声を出すので、政治家のように人前で話をする仕事の方たちにとても役立っているとの有り難い言葉をいただきました。

 野田聖子衆議院議員は30年も前から神風流岐庸会にて詩吟を習われ、「金州城」を良く吟じられるそうです。息子さんにも詩吟を歌ってきかせてあげたというエピソードも伺いました。多忙ながらも親子のコミュニケーションを大事にされている温かいお人柄、そして母親としての一面を垣間見ることができました。
 また、日本文化への敬愛についてもお話しされました。「詩吟の中には、日本の故郷の話、偉人の話、温かい話、悲しい話など、沢山のストーリーが込められています。そうした日本人の全てを包含した詩吟の中で、互いに酔いしれながら、そして合わせて、詩吟神風流の中で皆様が幸せな生活を送っていただきたい。」詩吟をやっていて本当に良かったと思えるような素晴らしいお話でした。

  平将明衆議院議員は、内閣府副大臣として地方創生の仕事をされてきました。クールジャパンの政策も担当されたことから、日本の良さを世界の多くの人たちに知ってもらい、世界中に日本のファンを作るというビジョンについてお話されていました。 世界遺産のユネスコ登録についても尽力され、その時に交流のあったクロアチアの首相とのエピソードは大変興味深く、視野の広さと行動力を感じました。
 日本の伝統文化を世界に広めていくことの意義を改めて認識させられ、詩吟も世界に広めていかれるように、芸術としての質の向上も大事であるという大変有意義なお話でした。  

  橋本聖子参議院議員は、北海道生まれ、北海道育ちで、親戚や姉妹が詩吟をされているそうです。日本の「文化力」についてお話されました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいては、日本の文化力を世界に発信する機会でもあります。「オリンピックという舞台を作り上げることで、素晴らしい日本の力を発揮できる」とお話しされました。文化力が高いということは、諸外国から尊敬される一つの要素になると思います。日本が尊敬され信頼されるためには伝統文化の担う役割も大きいとのこと、将来への希望をいただける素晴らしいお話でした。やはり、一つの道を極められた方のお話は大変説得力があるものだと感じました。

 なお、プログラムには、安倍内閣総理大臣、与謝野馨元国務大臣からご祝辞をいただき、また、前田一男衆議院議員からご祝電をいただきました。日本の豊かな文化芸術を花開かせること、長寿社会の日本における生涯学習の意義と役割について語られた言葉をいただき、九十年という伝統の重みを強く感じる大会になりました。


(写真)

吟詠 詩吟神風流総元 岩淵神風
吟題 西郷南洲作「獄中有感」




 西郷に寄せて
「我々吟詠家にとって関心を呼ぶ西郷隆盛は、多くの人々を惹きつける人間的魅力の持ち主であります。神風流の教本にも西郷の作詩は幾篇か収録され、日夜我々の愛吟するところとなっています。平易な表現の中に人の肺腑を衝くものがあり、吟じてのち爽快な思いが致します。技巧にとらわれない、詩魂の響きを持った作風と言えるのではないでしょうか。我々は『敬天愛人』をもって終生の所信とした彼の詩を吟ずることによって、少しでも『大西郷』の詩魂に触れたいと思うのであります。」(岩淵神風)



(写真)

 新潟県福吟会による書道吟
 

 「祝賀詞」(河野天籟作)
  揮毫:福吟会会長松川神饒




 (写真)

 新潟県劔豪会と柏新吟詠会による企画構成吟「安政の大獄と桜田門外の変」

  振付:前田神劔 
  企画構成:名古屋神藍 
 橋本佐内「獄中作」
 頼醇「獄中作」
 吉田松陰「辞世」
 梅田雲浜「訣別」      
 佐野竹之助「出郷作」
 黒沢忠三郎「絶命詞」
 村上仏山「無題」