梅花の吟

花が咲き始める季節になりましたが、「咲く」という言葉を昔は「笑う」と表現したそうです。
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百花に魁て咲く花といえば梅の花です。

1月21日 東京


「寒梅」  新島襄

庭上(ていじょう)の一寒梅
笑って風雪を侵(おか)して開く
争わず又(また)力(つと)めず
自ら百花の魁(さきがけ)を占(し)む

「笑って風雪を侵して開く」というところが好きです。
どんなに寒さと風雪が厳しくても「笑う」=「咲く」のです。

こうした梅の凛とした姿は、漢詩に多く詠まれています。
先日の花の会新年会でも「梅花」の吟を聴きましたので、梅が詠まれている詩をいくつか挙げてみたいと思います。

ホテルグランドアーク半蔵門


「雪梅」  方岳
梅有り 雪無ければ 精神ならず
雪有り 詩無ければ 人を俗了す
薄暮 詩なって 天又雪ふる
梅と併(あわ)せ作(な)す 十分の春

梅は春の到来を知らせる花であると同時に、まだ寒中にあることが人々の心を打つのだと思います。
「雪中竹小禽図」鈴木其一

「梅花」  王安石
牆(かきね)の角(すみ)なる 数枝(すうし)の梅
寒(かん)を凌(しの)ぎて 独り自ずから開く
遥かに知る 是れ雪ならずと
暗香(あんこう)の来たる 有るが為なり


「早春」  雪村友梅
雪逕(せっけい)清寒(せいかん)蝶(ちょう)未(いま)だ知らず
暗香(あんこう)時(とき)に好風(こうふう)を遺(おく)り吹く
野橋(やきょう)漏泄(ろうせつ)春光(しゅんこう)の処(ところ)
政(まさ)に横斜(おうしゃ)一両の枝在り

詩中に「暗香」とあるように、暗闇の夜でも香り高い梅は、その存在を知らせます。
自らの力で、花を咲かせ、その存在を知らせるところに強さを感じます。

梅は中国原産で、白鳳時代に渡来したといいます。
当時の梅は「白梅」であり、香り高い梅を人々は楽しみました。
「春告花」「芳香の美木」とも称されています。


2月4日 東京


平安時代には、紅梅が日本に伝わり、色が鑑賞されるようになりました。


2月4日 東京

時代を経て、白梅、薄紅色、紅梅など様々な種類の梅を堪能できるようになりました。

2月4日 東京



2月4日 東京


江戸時代には梅林の名所も各地に生まれました。

春の到来を待つ人々は、梅が花をつけるとその香りに満ち足りたひとときを過ごしました。梅が持つ清廉な余韻は人々を魅了しました。また、梅の枝は「もののふ」の本懐をも示唆するものとなりました。

「弘道館に梅花を賞す」 徳川景山
弘道館中 千樹の梅
清香 馥郁(ふくいく)として 十分に開く 
好文 豈(あに)威武無しと 謂わんや
雪裡(せつり) 春を占む 天下の魁(さきがけ)

好文木の堂々たる威風が詠まれています。
好文木とは梅のことですが、晋の武帝が学問を好むと咲き、学問をやめると咲かなくなったという故事から称されるようになりました。
梅は、真の武士たるものを示しているのだと、弘道館を起ち上げ文武を奨励した徳川景山の言葉に重みを感じます。



徳川景山は、水戸でこの弘道館と偕楽園を創設しました。梅の名所として有名です。
江戸では、当時、亀戸、谷中、蒲田、雑司ヶ谷、四谷、隅田川寺島、杉田などが梅の名所でした。

最後は、亀戸天神で見つけたこの和歌。
「美しや紅の色なる梅の花 あこが顔にもつけたくそある」
菅原道真が5才の時に詠んだそうです。
詩吟の節には合わないかもしれませんが、可愛らしいです。





さて、新年会でいただいた土筆の料理にも春めく芽吹きが感じられました😋🌸