吟詠コンクール大会

平成29年8月6日(日)新宿区牛込箪笥ホールにて、関東第二地区吟詠コンクール大会が開催されました。この大会は、平成29年度全日本詩吟道連盟全国吟詠コンクールの予選会も兼ねています。

初段~四段の部、五段~七段の部、八段~神号の部それぞれ優勝者に賞状と盾が贈られました。


五段~七段の部=「一般の部」、八段~神号の部=「各杯の部」それぞれ優秀な成績を収めた参加者は、全国決勝大会に進むことができます。



審査の様子です。審査の基準は全国で統一されていますので、基準に従い審査表に点数を書き入れます。


私は審査の時、音程の正確性を期すためにイヤホンを付けてコンダクターで音を確認しています。
音程は、採点の対象になります。その他、採点の対象となるのは、詩心(詩情の表現)、節調、発音、声量や迫力(気迫)、態度や姿勢です。

また、コンクールの参加者一人一人に講評を伝えることができるように、審査表のコメント欄にメッセージを書いていきます。点数だけでは表すことのできない評価は、今後の練習に向けて、結構大事なのです。
人それぞれの声は違いますが、それぞれの持ち味というものがあります。
どのようにトレーニングしたら自分の声を最も魅力的に出せるのか、どのように練習したら詩吟が上手くなるのか、日頃、詩吟の練習をするときに直面する課題だと思いますが、色々な先生からのコメントが示唆を与えてくれます。

その意味で、今回、ボイス・トレーニングの専門家でもあり、作詞・作曲家である水木翔子先生がいらしてくださり、コンクールの参加者一人一人にコメントをくださったことはとても有意義でした。
水木翔子先生のインターネットラジオ番組「ミナキーと洒落の日々」にお招きいただいて以来のご縁ですが、今回、とても嬉しいお言葉をいただきました。

「如何に詩を吟じるのか、皆様の詩吟からその思いも伝わってきました。今日は、何人かの詩吟を聴いて涙が出ました。」


水木先生もお話しされていましたが、詩を吟じるというのは、日本語の言葉の奥深いものを伝えることなのだと私も思います。
漢詩は難しいのですが、まずは詩の意味を知り、その詩を好きになることが、詩吟上達の一番の近道だと思っています。

では、詩を好きになるためには?
色々なきっかけがあると思います。
今日の大会で、これは絶対、漢詩に興味を持てる!と確信した場面がありました。
各教室ごとに合吟を発表する場があるのですが、藤が丘教室に通っている中国人留学生の李さんが、王昌齢「従軍行」を中国語で朗読をしてくれたのです。

従軍行 王昌齢

青海長雲暗雪山 
孤城遙望玉門関
黄沙百選穿金甲
不破楼蘭終不還

青海の長雲 雪山暗し
孤城 遥かに望む 玉門関
黄沙百戦 金甲を穿つも
楼蘭を破らずんば 終に還らじ

この詩は、中国の辺境の地に出征した兵士の心情が詠まれています。

広大な平原に立つ砦に登ると遥かに玉門関(甘粛省敦煌の西方)が見える。西域の砂漠地帯での戦争を絶えず行ってきたが、堅い鎧が穴だらけになってしまった。しかし、さらに西方の楼蘭(ロブノール湖付近にあった小国)を破らないうちは、国へ還ることができない。

一兵士の悲哀が感じられます。
中国漢詩朗読高校大会で優勝した経歴を持つ李さんの朗読は素晴らしく、その兵士の心情が見事に吐露されていました。嘆きと悲しみとが入り混じった詩として、聴く者の心に訴えかけてきます。
昔の人たちが書いた詩であるけれども、人類共通の遺産とも言える素晴らしい詩が沢山あります。知らないのは勿体ない。吟じてみないのは勿体ない。教師経験を生かして、そのための羅針盤のようなものを将来的には作っていきたいと思います。

さて、最後にコンクールの結果発表と表彰式が行われました。よみうりカルチャー荻窪教室(毎週水曜日午後1時~2時半の教室、生徒募集中!)の生徒さんが「一般の部」と「各杯の部」で入賞となりましたが、音程や発音・発声が安定していること(日頃の練習の成果)に加えて、詩情の表現の上手さ、気迫(会場を包み込む空気感のようなもの)が感じられる2分間を作ったことが大きいと個人的には思います。次は全国決勝大会です!

総元先生から全国決勝大会への出場認定書の授与