第49回新年全国詩吟大会兼各杯コンクール決勝


日時  平成30年1月28日(日)
会場  北区北とぴあ さくらホール










[ご挨拶(大会プログラムより)]

詩吟は日本の伝統文化として千年来、吟じ継がれているものであります。特に、幕末期、武士階級に広まり、国難の時期に於いて盛んになりました。漢詩を吟じ、学ぶということは日本人の精神修養として、また日本の歴史・文学・精神を後世に伝えるという意義深い役割を担っていると考えます。さらに、吟詠法は、丹田より発する力強い発声であり、多彩な音色と抑揚は情緒溢れるものであります。会員の皆様方はこれらを習得され、鍛錬されてこられました。このような全国大会を契機に、互いに切磋琢磨し詩吟発展の原動力になることを期待致します。


詩吟神風流総元  岩 淵 神 風

 
                   






午前の部終了後、式典が開催されました。ご来賓の北区区長花川與惣太先生、北区区議会議員戸枝大幸先生、声楽家・合唱団ドレミノ会指揮者杉本共栄先生よりご祝辞をいただきました。






いよいよコンクール決勝大会
各地区予選を勝ち抜いてきた吟士たちの吟を聴けるということもあり、会場1階席(806席)は満員でした。
独吟コンクールには課題吟がありますが、その中で決勝に出場した吟士の吟題をあげてみます。(順不同)

《独吟コンクール一般の部決勝》 

李白「早発白帝城」 3名
西道僊「城山」 1名
広瀬武夫「寄家兄言志」 5名
伊藤博文「飲某楼」 1名
朱熹「偶成」 1名
西郷南洲「偶感」 1名 
乃木希典「金州城」 2名
乃木希典「爾霊山」 1名
釈月性「題壁」 1名 
石川丈山「富士山」 1名 



《独吟コンクール各杯の部決勝》 

林羅山「武野晴月」 3名
梁川星巌「題常磐抱弧図」 4名
太宰春台「稲叢懐古」 2名
李白「哭晁卿衡」 3名 
杜甫「江南逢李亀年」 2名
賈島「渡桑乾」 4名
高適「別菫大」 1名
乃木希典「逸題」 3名


《合吟コンクール決勝》 

(プログラム掲載順)
張継「楓橋夜泊」 神笙会(東京地区)
木戸孝允「勧学」 永伊会男子(神奈川地区)
王安石「梅花」 永伊会女子(神奈川地区)
賈島「渡桑乾」 神繕吟詠会(千葉地区)
王昌齢「出塞行」 神旅会(埼玉地区)
李白「哭晁卿衡」 冠翔会(新潟地区)
梁川星巌「題常磐抱弧図」 十日町神邑会(新潟地区)
木戸孝允「勧学」 柏新吟詠会男子(新潟地区)
西郷南洲「偶感」 柏新吟詠会女子(新潟地区)
李白「贈汪倫」 松悠会(新潟地区)
頼山陽「題楠公訣子図」 総本部男子(関東第二地区)





合吟は1チーム10名です。男性と女性では声の本数が違うので男女別々のチームがほとんどですが、男女混合のチームも健闘していました。



総元吟詠「峨眉山月歌」

総元先生の吟詠は、李白「峨眉山月歌」の後に続いて、急遽『万葉集』の中から、山部赤人が詠んだ和歌「田児の浦ゆ うち出でて見れば 真白にそ 不尽の高嶺に 雪は降りける」となりました。
先週、東京都心でも4年ぶりに10㎝以上の積雪となり、一週間経っても雪が残っていました。この日の朝、目にした風景は、吟詠にもみるようにまだ「真白」だったので印象的な一吟でした。


続いて、石川丈山作「富士山」の大合吟、そして最後は佐久間象山作「送吉田義卿」の大合吟となりました。


「大合吟 岩淵神風と会場御一同様」
この詩は、佐久間象山が吉田松陰に贈った詩です。冒頭の之子(この子)とは、吉田松陰のことです。

神風流の教本『朗誦』に掲載されています。

之子 霊骨有り
久しく厭ふ 蹩躄の群
衣を振るう 万里の道
心事未だ 人に語らず
則ち人に 語らずと雖ども
忖度すれば 或は因有あり
行を送りて 郭門を出づ
孤鶴 秋旻に横たはる
環海 何ぞ茫茫たる
五洲 自ら隣を為す
周流して形勢を究めば
一見百聞に超えん
智者は機に投ずるを貴ぶ
帰り来たって 須く辰に及ぶべし
非常の功を 立てずんば
身後 誰か能く 賓せん 


昨年、流行語大賞にもなった「忖度」という言葉がこの詩の中に出てきますが、次のような内容になっています。

君(吉田松陰)は、国禁を犯してまでも海外の旅に出ようと決心した。
万里の道を旅立っていきたいというその心中をまだ語ってはいないが、私(佐久間象山)には君の決意がよくわかる。よって、君の門出を見送ろうとおもう。百聞は一見に如かず。日本を飛び出して世界の情勢を見てくるがよい。

吉田松陰が国禁を犯し、密航を企て幕吏に捕らえられたことは知られていますが、欧米に渡り見聞を広めたいという吉田松陰の決意を師である佐久間象山が「忖度」し、応援しています。
このように、「忖度」という言葉は相手の気持ちを「推しはかる」こと、「おもんばかる」ことであり、本来は特段に悪い意味はありません。すっかり悪いイメージがついてしまった「忖度」という言葉ですが、漢詩を読んで、言葉の正しい意味に出会えるのは結構楽しいものです。
詩吟は、漢詩の吟詠です。詩文の言葉を理解することが大事だということを常々教えられてきました。吟詠コンクールでも、詩文の理解、それによる詩心の表現も審査の対象となっています。

コンクールの結果発表と表彰式は、最後に行われました。

読売カルチャー荻窪教室からは、昨年《一般の部》で準優勝した金田さんが今年も《各杯の部》で5位に入賞しました!





《合吟各杯の部》の結果は、文部科学大臣賞に十日町神邑会、岩淵神風賞に神笙会、全日本詩吟道連盟賞に柏新吟詠会女子、努力賞に柏新吟詠会男子、奨励賞に永伊会男子が選ばれました。
(その他、入賞者については個人名になりますので、会員向けのページでご覧ください。)





表彰式

万歳三唱

表彰者を囲んで