大会のテーマは 「明治維新150年」


2018年 神風流全国詩吟大会

11月3日(土祝)9時半~18時


場所 有楽町よみうりホール

有楽町駅前読売会館(ビックカメラB2階~6階)の7階


    
      
今年は明治元年(1868年)から150年にあたります。「明治維新150年」「戊辰150年」など、節目としてのイベントも各地で開催されています。
幕末から維新にかけての時期、さらに明治時代には多くの詩吟が生まれていますので、詩吟でこの時代を描くことができるのではないか・・今年の神風流全国詩吟大会のテーマは「明治維新150年」です。



曜斉国輝『従京橋新橋迄煉瓦石造商家之図』 万屋孫兵衛 【寄別7-4-2-5】


様々な視点から捉えてみた「明治維新150年」特別企画
 嗚呼!明治 -「江戸」から引き継がれた「遺産」-
【構成】
・維新の胎動
・サムライ!!西郷 
・維新を吟ず 
・近代日本の夜明け 
・明治期の思想と文化 
・明治は遠くなりにけり 
・日本はどこへ向かったのか? 


「明治維新」の解釈は様々ですが、「明治」という時代を司馬遼太郎は「江戸時代という、じつに長い期間をかけて生育された実りが、明治という時代そのものだった」と捉えていると思います。「江戸の様々な遺産」が明治という時代に実ったというのは、特に人材については知られているところです。学問に熱心で、また親孝行や忠孝といった考え方が身に付いていて公共心が高い。そうした彼らは、幕末、日本が欧米列強の圧力にさらされた時、自分たちが生きる国のことを考え「己の力を世の役に立てる」との意識のもと行動しました。彼らの志は詩吟にも多く詠まれ、「江戸」から引き継がれた「遺産」として、明治という時代を実らせています。

企画では、こうした明治維新の原動力になった吉田松陰、橋本佐内、高杉晋作などの詩吟、また、維新三傑の西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允の詩吟を取り上げています。なかでも「西郷どん」で注目の西郷隆盛の漢詩は沢山あるので「サムライ‼西郷」としてまとめています。実際にはどのような人物なのかはわかりにくい西郷ですが、「欧米列強の侵略から守らなければならない」という強い気持ちが詩の中に詠まれています。



作者の心を吟じるのも詩吟の醍醐味です。他に、伊藤博文、福澤諭吉、元田永孚、夏目漱石など、歴史上有名な人物の詩吟を紹介しています。

広重 安藤徳兵衛『鉄道馬車往復京橋煉瓦造ヨリ竹河岸図』あらい亀吉 明治15 (1882) 【寄別7-1-2-3】

明治日本の近代化は急速に進展し、日清・日露戦争へと突き進みますが、企画では日露戦争の時期までとなっています。「明治維新150年」という「言葉」ではありますが、150年間という年月が必ずしも連続しているのではなく、非連続的部分があるものと考えます。日露戦争後の日比谷焼打ち事件がそれを象徴しています。
「江戸」から引き継がれた「遺産」はどうなってしまったのか?明治人が苦労してつくり上げた国家の行く末については、なぜ?という視点で、現代に生きる私たちが考なければいけないことだと思います。「日本はどこへ向かったのか?」というタイトルになっています。
歴史には色々な見方、解釈があり、「150年」の歴史の捉え方もまた様々だと思います。
詩吟の場合には、作品を作った人の心を吟じ、素直に作者の心に寄り添い言葉を伝えることを大事にしていきたいと思います。どのように感じ、考え、解釈するのかは、聴く者に委ねられる部分もあるかと思います。
そういった意味では、詩吟を通した歴史は幾通りもあるのです。
詩吟とは、知れば知るほど奥の深いものであると改めて感じます。
詩吟を通して歴史を振り返る企画となっていますが、振り返ることで、過ちを繰り返してはいけない、後世を良いものにしなくてはいけない。戦争を経験した方々の気持ちも込められているのではないかと思っています。詩吟を通して歴史を伝えることの重みを感じました。

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大会企画「明治維新150年」に寄せて

「一つのものを作り上げる」

昨年の神風流全国詩吟大会のテーマは「日本の名詩」でしたが、今年の大会テーマは「明治維新150年」。毎年テーマを決め、出吟者を募り、企画構成していくスタイルです。本来、企画構成吟の場合はあらかじめストーリーを作成して、それに見合う吟題を組み込んでいくと思うのですが、それとは違い、出吟者が選んだ吟題を構成していきます。私が勤務していた高校の文化祭でも、まず最初にテーマを決めてそれに合わせた企画を各参加団体が自由に作り上げていきます。それぞれの個性を保ちながらも、一つの大きなものを作り上げるというのは、とてもワクワクするものです。1+1が3にも5にも10にもなるかもしれない、そう思うと面白みも倍増し、モチベーションも上がります。神風流は多くの会から成り立っていますので、それぞれの個性があり、色々な会の個性ある詩吟を聴くのはとても面白く、勉強になります。大会とは、色々な会の発表を観覧できる貴重な機会でもあります。

「詩吟で歴史を辿る」

今年は全国で「明治の歩みを次世代に遺し、明治の精神に学ぶ」取り組みが全国各地で行われていますが、「歴史をどう振り返るか」という機会であります。幕末から維新につながる変革期、「明治」という時代に生きた人々が遺した詩歌の文言には、その時々の思想、人となり、歴史の教訓などが示されています。そうした意味では、「詩吟」というものも生の「資料」と言えるのではないかと思います。私は高校で「近代史」という授業を担当していたのですが、授業では「文学」で歴史を辿ることがあったので、同様に「詩吟」という生の資料でも歴史の授業を組み立ててみたいと思っていました。高校での一年間の授業カリキュラムでは、私の場合、4月に「なぜ日本が植民地にならなかったのか」から始めて、12月に「なぜ日米開戦となったのか」まで辿り着いて、最後に「明治・大正・昭和の総括」となりました。歴史に生きた人たちに焦点をあてて、現代の私たちはどのように考えたらよいのか?これからの時代、何をどのように生かすことができるか?など、色々なことを考察してきました。詩吟でも同様に、詩吟を主体にして歴史を辿ることが、現代に生きる私たちへの指針になるのではないかと思います。この機会に、詩吟の奥深さや歴史の面白さを伝えることができるならば幸いです。

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特別企画『嗚呼!明治』は、13時~15時の予定です。  

合吟・独吟・剣舞詩舞による構成です。
この企画の独吟吟詠は、コンクール決勝大会出場経験を持つ方々です。
時間の関係上、ナレーションは最小限となっています。


大会プログラムの表紙は、明治期を代表する浮世絵師小林清親の作品です。外国船が4隻描かれています。懇意にしているご近所の小宮山印刷工業さんが、金の箔押しでプログラムを作成してくれました。

入場無料、出入り自由です。ご来場をお待ちしています。