おもしろきこともなき世をおもしろく

 明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い致します。


さて、「おもしろきこともなき世をおもしろく」は、幕末の勤皇の志士 高杉晋作の言葉です。

おもしろくない世の中をおもしろく生きるためにどう考えたらよいのか?

それに対して、勤皇家として知られる野村望東尼が下の句を続け、句が完成したといいます。

「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」

どのような世の中であっても、自分の心の持ち方で変わるのだと。今の時代にも響く言葉です。コロナの影響を受け、困難な状況が続いていますが、その現実に立ち向かう方法を教えてくれます。


高杉晋作は約400余の漢詩を残しています。「もし、幕末ではなく、平和な時代に生まれていれば、有名な詩人になっていたであろう」と司馬遼太郎が述べています。

この機会に、高杉晋作の詩吟を紹介したいと思います。


馬上偶成

険に臨み 危に臨む 豈衆を 恃まんや

単身 孤馬 乱丸の 中

沙辺 甲を枕とす 腥風の 夕

幽夢 悠悠として 海東に到る


時は幕末。1863年、尊王攘夷運動の急先鋒だった長州藩は、関門海峡で外国船を砲撃しましたが、連合艦隊の反撃により、欧米の近代兵器の前で長州藩はわずか四日で降伏しました。藩から防衛力の強化を命じられた高杉晋作は、「平和な世の中に慣れてしまった武士だけでは力にならない」「世の中をよくするためには、すべての人が身分に関係なく、立ち上がらなければならない」と師である吉田松陰の「草莽崛起」の思想のもと、奇兵隊を組織しました。欧米列強の波が押し寄せる中、日本の未来を憂いた高杉晋作は、長州の藩論を討幕に導き、攘夷から討幕への道筋を作っていきます。幕府の長州再征軍との戦いでは全軍を指揮し、幕府軍を次々と破りました。「馬上偶成」はこの時の作と言われています。

詩吟を通して、高杉晋作の言動や生き様に触れ、活力を得ることができます。「馬上偶成」は力強さが漲り、人気のある詩吟です。


囚中作

君見ずや 死して忠鬼と為る 菅相公

霊魂 尚を在り 天拝の 峯

又見ずや 石を懐いて 流れに投ず 楚の屈平

今に至るまで 人は悲しむ 汨羅の江

古より讒間 忠節を害し

忠臣 君を思うて 躬を懐わず

我も亦 貶謫 幽囚の士

二公を 憶い起して 涙 胸に沾す

恨むを休めよ 空しく讒間のために 死するを

自ら 後世議論の 公なるを 有らん


※菅相公 菅原道真 死んでもなお忠誠を貫いたという

※天拝の峯 天子の方を向いている山 道真の魂は此の山にあるという

※楚の屈平 楚の屈原は懐王の信任厚かったが、讒にあい疎んじられ汨羅江に身を投じた

※讒間 告げ口によりおとしめること 国を思う忠義の者がおとしめられることがよくあったが、彼らは主君や国のことだけを思い、自らのことを思わないのである

※貶謫 讒にあい流されること 私もまた罪人として囚われた

※二公 菅原道真と屈原

※後世議論の公なる有らん 後世公平な世論が定まったならば我が心を諒解する者があるであろう


「囚中作」は神風流独特の琵琶調、変調が織りなす難易度の高い詩吟ですが、幕末の志士たちの詩吟の特徴である慷慨が表現されています。

「動けば雷電の如く発すれば風雨の如し」と伊藤博文が高杉晋作顕彰碑に記していますが、自分の信ずるところに従い、時代を突き進んだ人物でした。

2021年も厳しい状況を突き進まなければなりませんが、おもしろきこともなき世をおもしろく、挑戦し続ける努力を忘れずに進んでいきたいと思います。