「平家物語」を詩吟と琵琶で構成してみました


祇園精舎の鐘の声

諸行無常の響きあり

沙羅双樹の花の色

盛者必衰の理をあらはす

奢れる人も久しからず

ただ春の夜の夢の如し

猛き者も遂には滅びぬ

偏に風の前の塵に同じ


「風の前の塵に同じ・・・」

春の夢のような儚さ。人生の最期とは、風の前の塵のよう。


川嶋さんが、「平家物語」の冒頭を弾き語ります。


舞台は、源氏と平家一門が争った一ノ谷の合戦に移ります。

平家一門の多くが命を落とした戦いとなりました。


川嶋さんの琵琶をの伴奏にて「一谷懐古」を吟詠致しました。


1184年の一ノ谷の合戦では、源氏が勝利し、平家の軍は海に逃げていきました。

このような状況で、源氏の軍の熊谷直実は、逃げようとする平家の武者を探していました。


後半、熊谷直実の物語に移ります。


直実は、一人の若公達が海に逃げていたので引き留め、一騎討ちとなり、組み伏せたのですが、顔を見た瞬間、憐れみの情に変わりました。息子と同じ年頃の少年だったからです。命を救いたいと思うも、背後に源氏の兵が迫り来るので、人の手にかけるよりはと、直実は泣く泣くその若公達の首を取ったのでありました。若公達の腰の袋に一本の笛がありました。その笛の持ち主こそ平敦盛でした。戦場で聞こえたもの哀しい笛の主だったと直実は知ったのでありました。

「青葉の笛」で有名な平敦盛の最期を吟詠致しました。

一ノ谷の軍営 遂に支えず

平家の末路 人をして悲しましむ

戦雲収まる処 残月あり

塞上 笛は哀し 吹きしものは誰ぞ

神風流の詩吟「青葉の笛」は、和歌調をとり入れ、もの哀しい旋律になっております。

(※只今、音声の紹介準備中)








令和3年12月19日 東京都千代田区学士会館 詩吟神風流総本部主催の勉強会にて。

毎年恒例の総本部行事ですが、今回は、詩吟の新たな可能性を多くの方々に感じていただくために、琵琶奏者の川嶋信子さんをお迎えし、詩吟と琵琶による「平家物語」を構成したものです。

「平家物語」は、琵琶法師による弾き語りにより、全国に広まっていきました。源平合戦を題材にし、戦乱に翻弄された人間の悲哀や無常観が表現されています。今回、平敦盛に焦点をあて、詩吟の「一谷懐古」(梁川星巌作)、「青葉之笛」(松口月城作)、琵琶「敦盛」を織り交ぜ、皆様にお届け致しました。


【川嶋信子さんのご紹介】

桐朋学園大学芸術学科卒業。役者として活躍後、薩摩琵琶を鶴田流・岩佐鶴丈先生に師事。平家ゆかりの地など各所で琵琶の魅力を伝えながら、演奏活動を行う。無声映画に楽師として参加や琵琶のユニット「琵琶Style」など様々な演奏会を企画。琵琶体験講座「まなびわ」主宰。NHK邦楽オーディション合格、「邦楽のひととき」出演。