インターネット番組で詩吟を紹介する(1)


「詩吟の魅力とは?」

このようなテーマで、詩吟を紹介できる機会をいただきました。
http://www.ustream.tv/recorded/99068031

1月18日放送のインターネットラジオ番組『ミナキーの洒落と歌の日々』です。
この番組は、作詞・作曲家の水木翔子先生がパーソナリティーをつとめ、毎週水曜日21時~22時生放送で配信されています。UstreamTVで1か月間視聴することができます。

番組の中では、まず詩吟について、「日本語の定型詩(漢詩の書き下し文、和歌、俳句)を日本古来の節でうたうもの」と紹介しました。
「日本古来の節」には「音符」というものがないのですが、私は言葉が音符だと考えています。そういう意味でも、詩吟は「歌謡」とは異なる発展をしてきた日本のオリジナルの文化だと思います。

そして詩吟の魅力は、詩の中の言葉が綺麗で、美しい響きを作ること。
詩の中の言葉が綺麗なので、美しい情景を描くことができます。
吟じるとき、詩吟には合う言葉と合わない言葉があります。(芸人さんのあの詩吟によって世間では誤解されているようですが)正統な詩吟は、主として格調高い言葉、漢語や古語を吟じます。
若い人からは、言葉が難しくてわからないと言われることがありますが、それならば最初から知らない国の言語だと思ってみてくださいとお話しします。詩吟を知ることは外国語を学ぶときの楽しみに似ています。新しい未知の世界が広がるはずです(^^♪

次に、王翰作『涼州詞』を紹介しました。
高校の国語の教科書に載っているので有名です。
涼州とは、現在の甘粛省武威市。唐の時代、シルクロードに通じる国境地域であり、砂漠が広がる荒涼としたところでした。
国境は紛争が絶えません。国境を守るために出征した兵士が心情を詠んだものを総称して「涼州詞」といいます。

王翰は、詩の前半部分に、「葡萄の美酒」「夜光の杯」「琵琶」という、シルクロードを通じて伝わってきた品々を描きました。

葡萄の美酒 夜光の杯 
飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す

夜光の杯は、白い玉で作られた盃で、私も中国に旅行に行ったときにお土産として買ってきました。
月の光が透けて見える美しい杯を想像できます。
さらに、葡萄酒を飲もうとすると琵琶が掻き鳴らされ、異国情緒溢れた雰囲気で盛り上がります。しかし、兵士たちのこの酒宴は、悲しいものでした。
国境地帯にいる兵士たちの現実は、どのようなものだったでしょうか。
詩の後半部分でその心情が詠まれています。

酔うて沙場に臥す 君笑う莫れ(「笑うことなかれ」という書き下し文もあります)
古来 征戦 幾人か回る

私が酔って、砂漠に倒れてしまっても、君よ、どうか笑わないでおくれ。
古来、戦いに出て、生きて帰ってきた者がどれほどいるかわからないのだから。

明日をも知れない身なので、もう酔うしかないのでしょう。
戦争というものが、人々の命を奪うという現実。そうした戦場に身をおく者の心情が伝わってきます。



このように、詩吟の魅力は、詩歌を通して様々なことを追体験できるというところにあります。もっとも、この『涼州詞』を作った王翰も現地に行ったわけではなく、想像で詩作したそうですが・・。
詩吟を通して、詩中の人の想いに心を馳せたり、次の世代へのメッセージとして読み取ったりすることができます。
「詩」は詠み人の「志」です。詩の心というものは、代々、うたい継がれてきたものですから、大切な遺産でもあります。
歴史から学び、名言に出会い、時には人生の指針を見つけることができることを多くの人に知っていただけたらと思います。





番組の中では他に、以前ブログにも書いた菅原道実の和歌も紹介しました。

また、水木翔子先生のブログにも紹介していただきました。
1月18日の収録でしたので、22日の新年全国詩吟大会の案内、詩吟神風流の紹介もしていただきました。ありがとうございました。
詩吟『神風流』総元代範《岩淵神木(しんぼく)先生》をゲストにお迎えして


水木翔子先生を紹介してくださった渡邉先生、尺八伴奏をしてくださった大野先生、どうもありがとうございました。