春爛漫

東京・新宿区早稲田通り 3月31日撮影
東京・新宿区赤城神社 3月25日撮影




東京国立近代美術館工芸館 3月31日撮影

春爛漫の好時節・・・
詩吟教室でもお花見の話題になります。
メディアでも取り上げられていましたが、今年はお花見をする海外からの観光客が随分増えたそうです。日本の桜の名所が海外に発信されているのだと思いますが、日本を代表する桜の名所として、吟詠家としては奈良県の吉野山を思い浮かべます。
吉野の桜と南朝の歴史を詠んだ三つの絶句は「芳野三絶」と称され、この時期には取り上げたい漢詩です。
その三絶である梁川星巌「芳野懐古」、藤井竹外「芳野懐古」、河野鉄兜「芳野」の中で、教室では生徒さんに好きな漢詩を選んでもらいました。

一番人気だったのは、

 芳野懐古  藤井竹外

古陵の松柏 天飈に吼ゆ
山寺 春を尋れば 春 寂寥
眉雪の 老僧 時に箒を とどめ
落花 深き処 南朝を 説く

後醍醐天皇の御陵のあたりの松柏は、大風に吼えるような音を立てている。
山寺に春を尋ねてみると、春はもうひっそりしている。
雪のような白い眉の老僧が庭を掃いていたのだが、私の姿を見て箒を持つ手を止め、落花の中、南朝の話をしてくれた。老僧はどのような話をしてくれたのかと、南北朝の歴史を紐解いてみたくなる。


 芳野 河野鉄兜

山禽叫絶えて 夜 寥寥
無限の 春風 恨未だ銷せず
露臥す 延元陵下の月
満心の 花影 南朝を夢む

後醍醐天皇は吉野に逃れて三年程過ごし亡くなったのだが、南朝時代の恨み、哀しみはまだなくなっていない。全身桜花に包まれていつもまにか眠ってしまったら、南朝の昔の夢を見たのであった。


 芳野懐古 梁川星巌

今来古往 事 茫茫
石馬 声無く 抔土荒る
春は 桜花に入りて 満山 白く
南朝の 天子 御魂 香ばし

昔から今日まで漠然としていてはっきりしない。石馬は声無く、辺りもひっそりとして荒れている。
春のこ時期、桜は美しく、山に咲き乱れる花は白く美しい。花が後醍醐天皇の御霊をお慰めしているかのようで、その御霊は香ばしく感じられる。
梁川星巌は藤田東湖、佐久間象山と親しく、勤王の志士たちと交わり国事に奔走した。安政の大獄の直前にコレラで亡くなり、「星巌は死(詩)に上手」と評されたという。

「満山白く」という表現にもあるように、吉野山の桜が咲き乱れる写真はとても幻想的で美しいです。(吉野町観光協会HP)



                                 (2016年3月31日)